HOME › 第3講 アガリクスはどのようにがん細胞に作用するのか?
ヒトの遺伝子情報には、細胞に異常が起こると自滅するプログラムが組み込まれています。これをアポトーシスといいます。しかし、がん化した細胞ではこのプログラムが正常に働かず、どんどん増殖していく性質を持っています。こうしたがん細胞の活動を抑える物質がアガリクスの成分に含まれる「エルゴステロール誘導体」です。
ホクトきのこ総合研究所が、東北大学大学院歯学研究科口腔微生物学分野の力石秀実先生と共同研究を行い、抗腫瘍研究に取り組んだ結果、このエルゴステロール誘導体に数種の腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する作用があることが認められました。
【実験】
1)アガリクスからエタノール抽出を行い、その後、酢酸エチル可溶分画、カラム分画を経て、エルゴステロール誘導体を単離します。
2)それを培養したがん細胞に添加し、1日後にがん細胞の形態を観察します(MTT法、TUNEL法)。
【結果】
1)がん細胞への添加で細胞死を確認
エルゴステロール誘導体をがん細胞に添加したところ、細胞死が誘導される結果が得られました。濃度が高いほど、がん細胞の生存率が低くなりました。
2)肺がん細胞に高い感受性を示しました
シスプラチンなどの抗がん剤が効きにくい肺がん細胞でもアポトーシスを誘導することが判明しました。
※研究の詳細は、第10回日本機能性食品医用学会総会にて発表されました。
・抽出した多糖体からがん細胞の増殖抑制の効果
他にも試験管内の実験で、アガリクスから得られたβ-(1-3)-グルカンを含む多糖体で数種類の前立腺がんの細胞を培養したのですが、がん細胞を傷害する作用とともに、このアポトーシス誘導によるがん細胞死が引き起こされたのです。また、前立腺がんを移植したマウスに、アガリクスから得られた多糖体を投与した結果、がん細胞の増殖抑制が観察されました(C.H. Yu et al, Journal of nutritional biochemistry 20, 753-764, 2009)。
・骨髄性白血病細胞の自滅による増殖抑制
試験管内の実験で、数種類の骨髄性白血病細胞をアガリクス抽出物で培養したところ、アポトーシスによる増殖の抑制が見られ、同じく腫瘍細胞を移植したマウスに経口投与した場合、白血病細胞の増殖が抑えられたのです(C.F. Kim et al, Journal of ethnopharmacology 122, 320-326, 2009)。
・がん細胞のDNAの断片化
肺がんや胃がんでも、アガリクスから得られたステロイド物質がそれぞれのがん細胞のDNAの断片化を引き起こして、アポトーシスを誘導することが見出されています(H. Itoh et al, Oncology reports 20, 1359-1361, 2008)。
アガリクスの抗がん効果には、さまざまな作用があるということですね。
がんの治療法には、いわゆる三大療法の外科療法・放射線療法・化学療法のほかに、温熱療法・免疫療法・代替療法・造血幹細胞移植などがあります。温熱療法は、がん細胞が正常細胞に比べて熱に弱い性質を利用した治療法。免疫療法は、免疫担当細胞・サイトカイン・抗体等が活性化する物質を用いて免疫機能を目的の方向に導く治療法で、細胞免疫療法・ワクチン療法・サイトカイン療法・BRM療法・抗体療法・遺伝子療法などがあります。今いちばん期待されているのが、この免疫療法です。
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